Commercialization: Marketing & Distribution
ウクライナ紛争、世界のロシア依存についての再考に拍車を駆ける
サウスチャイナモーニングポスト - 23 Apr, 2022
寄稿者:マルチェラチョウ、JPモーガンアッセトマネージメント副社長、香港拠点にした世界市場戦略専門家
ウクライナ戦争が商品価格高騰に油を注ぎ、各国政府は食料と燃料の自給自足改善を重視
地域社会は、昨日のアースデイ(地球の日)の機会に、気候変動の影響を熟考しそして持続性が重要な事と認識を高め、多くの人々は、世界の燃料と商品市場における完全な変化をもたらす原動力を見つめ直しています。
ロシアウクライナ戦争は、これまで経験したことの無い商品価格上昇を煽っています。その結果、各国政府は、食料と燃料の自給自足そして原油、ガス、肥料、工業用金属及び食料のロシア依存を減らす事を、重視しています。
特に欧州は、エネルギー生産の強化への重要な約束をしており、グリーンエネルギー源導入
も含まれています。昨年欧州連合は、2030年の再生可能エネルギーの割合目標を、32%から40%に引き上げており、欧州委員会はごく最近、ロシアガスの輸入を本年末までに三分の二減らすとの目標を提案しています。
ある国は、原子力発電に転換するでしょうが、他は太陽光、水力及び風力発電容量増強を開始すると期待されています。例えば、ドイツは陸上及び海上風力発電を大幅に増強することを計画しています。英国は、その電力の95%を2030年迄に低炭素源からとすることを目指しています。
これら導入の全ては、ロシアウクライナ紛争が為政者に対して、彼らのロシア燃料依存を減らす事への圧力をかけ、グリーンエネルギーへの転換並びに温室効果ガス排出ゼロへの誓いを加速させています。
エネルギー市場における歪みが、欧州と米国に於けるインフレの一次動因である一方、その戦争は、農産物輸出に厳しさを生じ、それがアジアに於けるインフレに対しての大きな原因となっています。
ロシアとウクライナは、穀物市場に於いて大きな役割を担っており、世界小麦取引の28%、トウモロコシ輸出の約18%を占めています。その結果、今年初めから今日現在までに、小麦とトウモロコシの価格は、それぞれ43%、33%上昇しています。農産物市場は、穀物取引における起こるべき歪みに直接影響されますが、一方石油価格の高騰は、輸送コストとバイオ燃料の価格に影響を与えます。
若しアジアの一般家庭が、燃料よりも食料への消費を増やすなら、アジアの各国は、エネルギーインフレ以上に食料インフレに、より影響を受けやすくなります。
食料自給自足度は、世界の食料コスト変化に対しての経済反応の有効な指標でもあります。食料輸入依存が高い国、例えばフィリピンは、世界食糧価格の動きにより影響を受けやすくなります。
中国、インド及びベトナムの農産物正味取引は均衡して殆どゼロであり、これはある程度食料自給自足を指し示しています。一方、オーストラリア、ニュージーランド及びタイは、農産物輸出では実質的に大きな輸出国で、世界的な食料ショックには、それほど影響されないと見られます。
今のところ、アジアの食品価格インフレは、比較的穏やかに留まっています。中国に於いては、その食品価格インフレは昨年3月同期比較では、1.5%減じており、これは豚肉価格が4.4%値下がりしたことによるものです。
タイの食品価格インフレは3月前年同期比較では4.6%上昇、マレーシアの2月前年同期比較で3.7%の上昇で、タイの場合は8年来、マレーシアの場合は4年来の値上がりですが、その速度はそれほど早いものではありません。例えば、米国の3月の食品価格インフレは8.8%で、ブラジル、チリ及びハンガリーは8%を超えています。
今後の事ですが、殆どのアジアの国々が回復の初期段階にあるとするなら、食品価格上昇が、明らかに危機となることを示さない限り、インフレとの戦いに限定的な金融政策措置が取られるものと予想されます。減税、そして食品及び肥料補助金は、一般家庭と企業の収入損失を補う助けになるでしょう。
短期的には、地政学的な事案が商品市場とインフレに影響を与え続けると思われます。商品インフレが意味するところをより良く判断するには、ウクライナ紛争、国際的肥料価格と量、コメの価格動向そして収穫予想を監視することが、重要となります。
長期的には、グリーンエネルギーへの移行、食料自給自足確保の必要性が重要性を増し続ける事になります。
以上
寄稿者:マルチェラチョウ、JPモーガンアッセトマネージメント副社長、香港拠点にした世界市場戦略専門家
ウクライナ戦争が商品価格高騰に油を注ぎ、各国政府は食料と燃料の自給自足改善を重視
地域社会は、昨日のアースデイ(地球の日)の機会に、気候変動の影響を熟考しそして持続性が重要な事と認識を高め、多くの人々は、世界の燃料と商品市場における完全な変化をもたらす原動力を見つめ直しています。
ロシアウクライナ戦争は、これまで経験したことの無い商品価格上昇を煽っています。その結果、各国政府は、食料と燃料の自給自足そして原油、ガス、肥料、工業用金属及び食料のロシア依存を減らす事を、重視しています。
特に欧州は、エネルギー生産の強化への重要な約束をしており、グリーンエネルギー源導入
も含まれています。昨年欧州連合は、2030年の再生可能エネルギーの割合目標を、32%から40%に引き上げており、欧州委員会はごく最近、ロシアガスの輸入を本年末までに三分の二減らすとの目標を提案しています。
ある国は、原子力発電に転換するでしょうが、他は太陽光、水力及び風力発電容量増強を開始すると期待されています。例えば、ドイツは陸上及び海上風力発電を大幅に増強することを計画しています。英国は、その電力の95%を2030年迄に低炭素源からとすることを目指しています。
これら導入の全ては、ロシアウクライナ紛争が為政者に対して、彼らのロシア燃料依存を減らす事への圧力をかけ、グリーンエネルギーへの転換並びに温室効果ガス排出ゼロへの誓いを加速させています。
エネルギー市場における歪みが、欧州と米国に於けるインフレの一次動因である一方、その戦争は、農産物輸出に厳しさを生じ、それがアジアに於けるインフレに対しての大きな原因となっています。
ロシアとウクライナは、穀物市場に於いて大きな役割を担っており、世界小麦取引の28%、トウモロコシ輸出の約18%を占めています。その結果、今年初めから今日現在までに、小麦とトウモロコシの価格は、それぞれ43%、33%上昇しています。農産物市場は、穀物取引における起こるべき歪みに直接影響されますが、一方石油価格の高騰は、輸送コストとバイオ燃料の価格に影響を与えます。
若しアジアの一般家庭が、燃料よりも食料への消費を増やすなら、アジアの各国は、エネルギーインフレ以上に食料インフレに、より影響を受けやすくなります。
食料自給自足度は、世界の食料コスト変化に対しての経済反応の有効な指標でもあります。食料輸入依存が高い国、例えばフィリピンは、世界食糧価格の動きにより影響を受けやすくなります。
中国、インド及びベトナムの農産物正味取引は均衡して殆どゼロであり、これはある程度食料自給自足を指し示しています。一方、オーストラリア、ニュージーランド及びタイは、農産物輸出では実質的に大きな輸出国で、世界的な食料ショックには、それほど影響されないと見られます。
今のところ、アジアの食品価格インフレは、比較的穏やかに留まっています。中国に於いては、その食品価格インフレは昨年3月同期比較では、1.5%減じており、これは豚肉価格が4.4%値下がりしたことによるものです。
タイの食品価格インフレは3月前年同期比較では4.6%上昇、マレーシアの2月前年同期比較で3.7%の上昇で、タイの場合は8年来、マレーシアの場合は4年来の値上がりですが、その速度はそれほど早いものではありません。例えば、米国の3月の食品価格インフレは8.8%で、ブラジル、チリ及びハンガリーは8%を超えています。
今後の事ですが、殆どのアジアの国々が回復の初期段階にあるとするなら、食品価格上昇が、明らかに危機となることを示さない限り、インフレとの戦いに限定的な金融政策措置が取られるものと予想されます。減税、そして食品及び肥料補助金は、一般家庭と企業の収入損失を補う助けになるでしょう。
短期的には、地政学的な事案が商品市場とインフレに影響を与え続けると思われます。商品インフレが意味するところをより良く判断するには、ウクライナ紛争、国際的肥料価格と量、コメの価格動向そして収穫予想を監視することが、重要となります。
長期的には、グリーンエネルギーへの移行、食料自給自足確保の必要性が重要性を増し続ける事になります。
以上